猫に多くみられる、さまざまな泌尿器疾患。
その罹患率はとても高く、猫の2頭に1頭が猫下部尿路疾患(FLUTD)や尿石症、膀胱炎、尿道閉塞など、なんらかの泌尿器疾患の経験があると言います。
きっと先生も、日常診療でこれらの疾患に遭遇する機会が多いと思います。
治療が難しい疾患のひとつですが、先生はこれらの泌尿器疾患を…
先生もご存じのとおり、獣医療は日々進歩し、めまぐるしく発展しています。
そのため、大学で学んだ内容だけでは日常診療に対応できないこともあるでしょう。
だからこそ向上心にあふれる獣医師は、学会やセミナー、論文、自宅学習用の教材などから最新の治療法を学び、より良い結果を出せるようアップデートを続けています。
その一方で、大学時代に学んだひと昔前の治療法に疑問をもたず、「なんとなく」でその治療を続けている先生がいることも、また事実です。
たとえば、
「尿路感染症には抗菌薬を投与しておけば良い」
「尿石症には療法食を与えればOK」
などは、大学時代の知識のままの治療の一例と言えますが…
先生も大学時代「尿石症の治療には療法食が有効である」と学んだはずです。
実際、尿石症の治療をおこなうとき、「どの療法食を与えれば良いのか?」と、療法食の種類に着目されている先生は、たくさんいらっしゃいます。
たしかに、結石の原因物質の尿中飽和度を下げたり、尿pHを酸性に維持するうえで、療法食は有効な選択肢かもしれません。
でも、先生に考えてほしいことがあります。
もし療法食を使うことが、本来は罹患しなくてもいい病気にかかる原因となっているとしたら?
「そんなことはあり得ない」と思うかもしれませんが、これはウソでも大げさでもありません。「とりあえず」で与える療法食は、治療と逆の結果になるリスクがあるのです。
事実、大学で泌尿器疾患を専門に研究している獣医師は、
「療法食だけで結石を減らすことはできない」
「療法食こそが不要な病気を増やしている一因である」
と言います。
病気を治療するための行為が、逆に病気のリスクを高める結果になっているなんて、元も子もありませんよね。
このような治療を続けていたのでは、飼い主さんの期待に応えられないばかりか、長期的な病院経営にも大きなデメリットとなるのは目に見えています。
では尿石症の猫に対し、具体的にどのような治療をおこなえばいいのか?
今回、最新の泌尿器疾患治療を教えてくれる講師は、日本獣医生命科学大学の宮川先生です。
この問題を正しく理解していただくために、まず、症例をひとつご紹介させてください。
患者は、シベリアンハスキー(10歳齢 避妊雌 19.45kg)です。
ある日、頻尿と血尿を主訴にホームドクターに来院されました。診断の結果は細菌性膀胱炎。そこで獣医師は抗菌薬としてエンロフロキサシンを投与しました。
すると、一時的に細菌性膀胱炎は改善しましたが、尿失禁を起こすようになりました。そのため療法食として、pHコントロールドライフードを与えはじめます。
獣医師は尿失禁の原因に原発性括約筋機能異常を疑い、ホルモン療法などを試みましたが思うような改善はみられません。
くわしい診断や治療を目的に、宮川先生の大学に紹介来院することになりました。
そのときに撮影した腹部エコーが以下になります。
左の画像から、膀胱の中に大きな結石がひとつあるのが認められました。また、その周辺にはキラキラと光る砂状の結石があるのもわかります。
患者はpHコントロールのドライフードを与えられていましたが、尿比重は1.033と高めに推移しており、尿量が増えている所見は認められませんでした。
この症例からわかるのは、最初は細菌性膀胱炎の治療として療法食を与えていても、あとから結石ができてしまうケースがあること。
つまり療法食だけでは、結石の予防はできないのです。
このような例は決して珍しくないのですが…、
結石を作らない、再発させないためには、どんな治療をすれば良いのでしょうか?
その答えは「どのように結石ができるのか?」を考えると見えてきます。
たとえば、シュウ酸カルシウムはシュウ酸とカルシウムが結合し、結晶を作ります。その結晶が集まり結晶核が形成され、最終的に結石になっていきます。
実は、このプロセスの中に「結石が形成される要因が5つ」あります。
過飽和とは、尿中にシュウ酸やカルシウムがたくさん存在している状態のこと。
たとえば、尿へのカルシウム排泄量が多いミニチュアシュナウザーのような犬種や、高カルシウム血症などの基礎疾患がある場合、尿へのカルシウム排出量も増加することになります。
このようなケースでは、尿中のシュウ酸やカルシウムが過飽和状態になり、シュウ酸カルシウム結石が形成されるリスクを高めることになるのです。
シュウ酸カルシウムの形成には、結晶化を抑制する物質の影響もあります。
たとえば、クエン酸(クエン酸カルシウム)やマグネシウム(シュウ酸マグネシウム)などは、結晶化を抑制する物質の一例です。
体内でこれらの物質が減少すると結晶化を阻害するものがなくなるため、シュウ酸カルシウムが形成されやすくなります。
結晶が集まるには、核が必要になります。
この結晶核をつくるのが、細胞成分や細菌、有機物などの物質です。
結晶核が形成されると、その表面にシュウ酸やカルシウムが付着し、結晶はさらに成長します。その結果、結石が形成されることになります。
結晶となって析出される尿pHは、シュウ酸カルシウムなら酸性。ストルバイトならアルカリ性であることはよく知られているとおり。
当然、この尿のpHも結石が形成される要因のひとつです。
結晶核が石になるには、ある程度の時間がかかります。
その結晶化に必要な時間を生じさせるのが、尿の流れが悪くなる「うっ滞」です。
上記でご説明した4つの要因と、さらに尿のうっ滞が引き起こされることで、結石が形成されることになります。
以下が、結石を形成する5つの要因を図に当てはめたものです。
先ほどの結石が形成される5つの要因に対し、それが起こる原因や関連する疾患を考えると、療法食が有効な範囲が見えてきます。
これらの結果を見ると、結石を形成する5つの要因のうち、食事でコントロールできるものは①過飽和と②結晶化を抑制する物質の減少しかありません。
尿石症は食べ物が悪いからと勘違いされやすいですが、実際はそれだけではありません。
大事なことは、療法食だけで結石の予防ができるとは考えずに、同時に他の3つの要因に対する治療も考えていくことなのです。
続けてもうひとつ、先生に考えてほしい治療があります。
先生は普段、猫の特発性膀胱炎(FIC)をどのように治療していますか?
FICは基本的に根治は不可能な疾患です。そのため、発症時の重症度を低下させたり、再発期間を延ばす治療が重要になります。
また、雄猫の場合には尿道閉塞が腎臓に障害を生じさせることもあるため、尿道閉塞をくり返させない対策も必要になります。
では…
先生は何だと思いますか?
排尿を促すために水分摂取量を増やしたり、食事療法が重要と考えるかもしれません。他にも、薬物による痛みのコントロールが重要だと考える先生もいるかもしれません。
しかし、FICを適切にコントロールするうえで、もっと重要なポイントがあると宮川先生は言います。
それは、「ストレスの除去」です。
近年、さまざまな研究により、ストレスが猫の特発性膀胱炎の発症、悪化に関連していることがわかってきました。
食事や薬物療法で一時的に改善がみられたとしても、また、すぐに再発をくり返してしまうのは、ストレスの原因を取り除けていないことが一因と言えます。
つまりFICを適切にコントロールするには、水分摂取量や食事療法、薬物療法よりも優先してストレスの除去を考える必要がありますが…、
猫は、どんなことにストレスを感じているのでしょうか?
動物行動学的には、「猫はプライバシーが重要な動物である」と言われています。
そのためストレスの原因は、自分の居場所や自分の食事、自分の食器、自分のトイレに至るまで、細かなところにも存在します。
他にも、新しい家に引っ越した、新しくキャットタワーを買った、新しいペットが増えたなど、子どもや孫が産まれたなども、ストレスの要因となります。
以下は、宮川先生が実際に対応したストレスの例です。
猫が何にストレスを感じているかは個体差があると、宮川先生は言います。
つまり、決まったパターンのようなものはなく、飼い主さんとのコミュニケーションから原因を探っていくしかありません。
たとえば、宮川先生が独自に改良されたストレスチェックシートの項目には、
など、基本的な質問からFICの意外な原因となるストレスまで、網羅されています。
他にも、特発性膀胱炎や尿石症の患者の多くは、システムトイレを使用している傾向があります。このような点も、ストレスの原因を探る上で知っておくと便利です。
今回の教材では、具体的な症例をもとにFICの治療コントロールのポイントもわかりやすく学べますが…
ここまでご紹介したのは、今回、先生が学べる内容のほんの一部です。
宮川先生には、療法食や薬物療法の意外な落とし穴や、大学では学べない日常診療のポイントなど、たくさんの最新の泌尿器疾患治療のノウハウを教えていただきました。
その治療法の根底にある考え方は、「間違った治療で、本来かかる必要のない病気にはしたくない」という思いです。
罹患率が高く、遭遇する機会が多い泌尿器疾患だからこそ、先生も安心して治療できる最新のノウハウにアップデートしませんか?
そうすれば…
「宮川先生の講演内容は、明日の診療現場に必ずや役立つはずです」
宮川優一先生は本学動物医療センターで腎臓科を担当されています。正確な理由は解りませんが、宮川先生が担当する症例は膵炎や腸炎を合併していることが多く、腎臓病だけでなく、膵炎や腸炎の症例(多くはイヌ)を手がけています。また、ネコの特発性膀胱炎、尿管結石の症例も多く経験されています。
宮川先生の博士論文のテーマは腎機能、特に糸球体ろ過量に関するもので、今も腎臓病の研究に心血を注いでいます。当然のこと、宮川先生は腎臓病・泌尿器病に関する最新の文献にも目を通されています。つまり、宮川先生のセミナーは、これまでの彼自身の研究成果および最新の情報、さらにはこれまでの豊富な臨床経験に裏打ちされたものです。
腎臓病や泌尿器病の症例は非常に多く、今後も増加し続けると思われます。宮川先生の講演内容は、明日の診療現場に必ずや役立つはずです。このような理由から、私は宮川優一先生を推薦します。
日本獣医生命科学大学 教授 竹村直行 先生
DVDに収録された宮川先生の講義がまとめられた、レジュメ冊子をお渡しいたします。DVDをじっくり視聴するお時間がなければ、まず、この冊子から先に目をとおしてください。そして、気になる個所の映像から視聴していただければ、効率のよい学習が可能です。もちろん、復習用のテキストとしてもご活用いただけます。
特発性膀胱炎のコントロールには、食事や薬物療法よりも「ストレスの除去」が重要であると宮川先生は言います。しかしストレスは、特定が難しいという問題がありますよね。宮川先生が使用しているこのアンケートを使えば、隠れたストレスまで見落とすことなく発見できるようになります。
猫の膀胱炎を適切にコントロールするには、与えるフードの種類や飼育環境など、飼い主さんの協力も欠かせません。しかし一から十までわかりやすく説明するのは大変ですよね。そんなときは、猫の膀胱炎で飼い主さんが知っておくべきポイントがまとめられたこの冊子をお使いください。
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